家に帰ってきたら、台所のコンロには大きめの鍋が置いてあった。
一般家庭では、その中に入っているものはカレーだったりするが、我が家は違う。
というより、「母親の作ったカレー」というものが分からない。

我が家では、カレー=レトルト。
カレー=手抜き料理。

大学に入ってからふとその話をしたら、ほぼ全員に驚かれた。
ほほ〜。現代のお袋の味は、肉じゃがではなくカレーか。

今年のゴールデンウィークのある日、母は唐突に私にカレーを作らせた。
この歳になって、カレーを作るどころか、ある料理を最初から最後まで責任を持って作るのが初めてだった私は、母の助言を聞きつつ何とかカレーを完成させた。
(「カレー」を「何とか」完成させる、っていうのも恥ずかしい話だけど)

美味しそうにカレーを食べる母を見て、私はふとある事を聞いた。
「何で、うちのカレーはレトルトなの?」
母はボソッと答えた。
「前に一度作ったとき、お父さんに『こんなもの食えるか』って言われたから。」

その時、私の中で最低だった父の格が更に下がったのは言うまでもない。

我が家で、カレーの代わりに鍋に入っているのは「ラタトゥーユ」。
それこそ1〜2年前から母のレシピに加わった新参者。
でも、私にとってはそれがお袋の味。
数え切れないほど何回も作ってもらった料理は他にたくさんあるけれど。

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